HOUSE OF “KAMISHIBAI STAGE”

試作‘紙芝居舞台型’小住宅(羽藤広輔)

敷地は長野市内の傾斜地に造成された住宅地に位置しており、東側に広がる信州の雄大な風景をそのまま生活空間に取り込むことを考えたが、大型の開口を設けた際の冬場の室内環境の悪化が懸念された。そこで、断熱性能を備えた大扉を計画し、その形状として「紙芝居舞台」の形式を採用した。この大扉は、寒さ対策に止まらず、東からの直射光の遮断や、視線のコントロール等、日々の使い勝手や季節の移ろいによって、様々に開閉がなされ、建物のファサードを変化させる。一方、近代建築史の議論(普遍性と地域性など)をそのまま乗り越えてしまいそうなポテンシャルを持った「紙芝居舞台」という形式を、建築全体のコンセプトモデルと見立ててみると、自然換気と空調を使い分ける為に間仕切り建具を有効に使うこと(カードの抜き差し)、眺望に干渉する電線や前面道路から視線をコントロールすること(緞帳)、床の間を焦点とする身廊的な空間を実現する門型の架構(木枠)、自然換気を促す高窓とソーラーパネルを備えた屋根頂部の環境ユニット(取手)等、ばらばらだったアイデアが立ちどころに一つの型に統合された。さらに、「紙芝居」の忘れてはならない重要な特徴として、それが単なるアトラクションではなく、小さなコミュニティの形成の場であったことが挙げられる。どの季節でも、どの時間でも、快適な家族の居場所をつくり、時には、知人や地域の人々との交流の場にもなる。この建築がそうした機能を果たすことを期待したい。
(『和モダン』vol.14,新建新聞社,2021.12 掲載)