RESTRUCTURING OF THE MOUNTAIN LANDSCAPE AREA AND PASSING ON THE MEMORIES THROUGH THE MUSEUM

美術館による山岳景観地帯の再編と記憶の継承:自然を作品と捉えて(B4 友井遥菜)

中部山岳国立公園の一部である乗鞍高原は、人口500人あまりでありながら、登山を目的に年間300万人もの観光客が訪れる。一方、同じく乗鞍高原にある一の瀬園地は、かつては人々の生活を支えた入会地で、乗鞍岳を見渡せる山岳景観をもっているが、現在は利用されることなく森林化し、この場所の歴史や景観を知る人はほとんどいなくなっている。そこで本計画では、一の瀬園地に美術館を提案する。一般的に、美術館とは、研究・教育・楽しみの目的で美術作品及び関連資料を収集し、保存し、研究し、利用に供し、また展示を行うことを通じて、社会とその発展に貢献する公共の機関である。このことから、自然そのものを美術作品と位置づけた美術館を設計することで自然に対して上記のような効果をもたらす計画とした。具体的には、歴史散策コースと景観コースの二つのアプローチと地点ごとのパビリオン、奥地にアプローチの合流する本館を設計する。景観コースではこれまで人々が山岳景観を楽しむために設定していた場所を重視し、地域の住民へのヒアリングから四季を通じての様子を把握し、それらをスケッチすることによってそれぞれの場所の自然を読み取り、各地点で山と身近な自然との融合による、より良い風景の見方を模索したパビリオンを設計した。歴史散策コースでは、かつて使われていた基礎石等を利用しながらパビリオン設計することで、それぞれの場所にある記憶を再編する。2つのコースが合流する奥の美術館本館では、大屋根を架けることで風景ではなく直接的な自然との関わりを促し、感覚を研ぎ澄ませながら大屋根を抜け、一番間近に見える場所で乗鞍岳を体感してもらう計画とした。このようにして、自然を題材とした美術館を設計することで、この地の忘れられた景観や歴史を再生、再編する。(『近代建築6月号別冊 卒業制作2024』掲載)