LIVED INTERCONNECTIONS

生きられた連関(M2 岩崎維斗)

本研究は、人の営みと自然(気候、 地勢 水脈、動植物から微生物までを含む全ての生命)が共生する中山間地域において、変遷する事物連関の結節点としての意義を持つ建築の在り方を探究するものである。中山間地域は農林業と自然環境が深く結びついた地域であり、農作業や資源、それらを取り巻く事象において1年を1周期とした事物連関が存在し、循環している。このような事物連関は個々の農家の知恵や経験によって育まれてきたものであり、「生きられた連関」と捉えられる。本研究は、7つの章から成り立っている。第2章では、事物連関に焦点を当てる既往の事例を概観し、本プロジェクトの位置を確認する。第3章では対象農家とする信州西村りんご園の概要を確認する。信州西村りんご園は果樹栽培が盛んな長野県埴科郡坂城町に位置し、標高差や寒暖差が大きい傾斜地を利用し、りんごを栽培する農家である。第4章では農作業体験及びヒヤリングを通じて調査した1年間の事物連関の整理と分析を行う。農家は多種多様な作業を行うことからしばしば 「百姓」 と呼ばれ、その農作業の多くが資源と関わる行為であり、それによって中山間地域の資源の循環が促され、事物連関が成り立っている。そこで、事物連関を支える農作業の調査を行う。調査内容は、作業内容、作業月、関連環境、関連資源、使用農機具とし、農作業名とそのドローイングを含めて整理し、百姓リストを作成する。また、農作業の全体像を把握するために、百姓リストを基に、作業月別及び関連環境別にまとめた農作業循環図を作成する。さらに、各農作業の関わり合いで促された資源の循環によって形成される固有の事物連関の全体像を把握するために、百姓リスト及び農作業循環図を基に、事物連関図を作成する。第5章では既存小屋の実測調査の整理と分析を行う。周囲の遊休・荒廃農地にはかつて利用されていた小屋が点在し、この状況は、地域の農業生産や土地利用の低下を象徴していると同時に、変遷する事物連関の結節点としての可能性を秘めているとも考えられる。そこで、小屋の現状や潜在的な価値を把握し、再活用の可能性を探るため、4つの既存小屋の実測調査を行う。 第6章では前章までを踏まえて変遷する事物連関の結節点となるように4つの既存小屋の改修計画を提案し、第7章では研究の総括を行う。