OPEN INTERACTION DESIGN THEORY

開放的インタラクション設計論(M2 小池太一)

本研究は、人間の身体と環境の相互作用を通じて、個人間や個と社会の循環的な関係性を「開放的インタラクション」と定義し、その設計手法の追求を目的としている。 従来のデザイン理論がモノを中心とした限定的な相互作用に焦点を当てていたのに対し、本研究は、モノや建築が媒介となって、身体同士の相互作用が循環する場の構築のための、新たなアプローチを模索するものである。先行事例として、荒川修作とマドリン・ギンスの 「養老天命反転地」 津川恵理の阪急三宮駅前広場、西沢立衛の豊島美術館などが挙げられる。これらは抽象的形態や空間配置を通じて身体的行為や解釈の多様性を誘発し、人と環境の一体化や共振を強調するものである。また、ゴンブリッチの「棒馬考」やメルロ=ポンティの「間身体性」の概念を基に相互作用を引き起こす可能性を検討する。まず、間身体性などのこれまで議論されてきた概念を基に、住宅2件、展示場1件の計3つの試作を製作した。一つ目はパブリックとプライベート空間を緩やかに繋がれた住宅の設計である。敷地中央に炉を設け、建具の動きによって環境の変化を誘発し、外部と内部の連続性を作り出した。二つ目は、7棟の単身者向け住宅を提案し、各棟の一階を地域と共有する浴室に設定することで、居住者間や地域との間で意図せぬ関係性が発生する場を創出した。三つめは鑑賞者の身体を作品の展示空間に組み込んだ展示場の設計を行った。これらの試作を通じて得ることができた知見に加え、開放的インタラクションにおける絵本と建築の共通点に着目し、絵本の構図分析を行った。分析によって得られて9つの特徴的な構図を設計に反映させることで、日常的な身体行為が他者にとって、想像力を働かせる対象となる場の設計手法について考察した。以上を踏まえ、本制作では公園の改修を計画した。対象敷地は長野県長野市に位置する「昭和の森公園」である。この計画では「健康」と「他者への想像力」を再定義し、開放的インタラクションが起こる場の設計によって、共同体としての身体の健康を促進するための、これからの健康公園のありかたとそのための空間について提案した。本研究は、開放的インタラクションの設計論について、自己と他者の「フィクショナルな距離」を調整し、想像力を喚起する可能性をもつ建築のメディア性に着目し、設計を通じてその実現を模索した。