SPATIAL EXPERIENCES WOVEN BY THE SUBTLE FLUCTUATIONS OF NATURAL LIGHT AND TIME

自然光と時間の揺らぎが織りなす空間体験:質の時間を取り入れた建築空間の探求(M2 関祐介)

本研究は、自然光を通じた空間の揺らぎと時間感覚の多層性を探求し、生活行為や人のふるまいとの関係性を明らかにすることを目的とする。現代建築が人工照明や画一的で効率性を重視する空間が多くなる中、自然光や時間性がもたらす豊かな空間体験が失われつつある現状に対し、自然光を建築空間に積極的に取り入れることで、効率性に偏らない建築の可能性を模索した。まず、自然光がもたらす視覚的・身体的感覚の効果を観察するために、模型スタディを実施した。特に、自然光による物質的な見え方や内景の移ろいを観察し、それが時間感覚や空間体験に与える影響を分析した。ここで得られた知見に基づき、光と影の操作や空間の揺らぎを具現化する20個の抽象モデルを抽出し、ベルクソンの「量的時間」と「質的時間」を参考にモデルを分類した。自然光が量的時間と質的時間の双方に影響を与え、それらを連続的に体験できる可能性を検討した。これらの分析を基に、2 つの建築プロジェクトを提案した。1 つ目のプロジェクト「ガラスの家」では、祖父母の住む住宅を対象に、自然光を利用した「生きた空間」を計画した。ガラスを用いた多層的な光の操作を通じて、住人の時間感覚を豊かにし、生活行為と時間が連動する空間を創出した。2つ目のプロジェクト「展望台兼ギャラリー」では、長野県佐久市臼田の宇宙観測所を敷地とし、星空と自然光を活用した体験的な空間を提案する。昼間は内景の動きや空間の揺らぎを生み出し、夜間は静的な星空観測を楽しむ空間とした。これにより、訪問者は量的時間と質的時間が交錯する体験を得ることができる。本研究では、自然光の操作が単なる視覚的効果にとどまらず、時間や空間体験の多層性を生み出すことについて探求した。さらに、建築が人の生活や感覚に密接に関わり、地域資源や文化との調和を図ることで、建築が単なる物理的な器を超えた「時間を体験する装置」として機能する可能性を提示した。これにより、現代建築における新たな空間体験のあり方と価値を示すことができた。