線を張るとき:自己と非自己の関係性に絡む、偸み人の建築(M2 柳町一輝)
本研究は“環境”という言葉の「主体‐客体」構造に着目し、空間の主体性・客体性の両義性をもつ多元的な建築を探求する。環境の構造から、「主体的アプローチ」と「客体的アプローチ」に分けて4つの試作を行い、「線を張るとき」と題した3つのProjectで建築の提案を行った。主体的アプローチでは、人間の取り巻く状況から自己変容を許容し、人間の持っている未知なる能力を引き出す建築前の形を試作した。客体的アプローチでは、とりまく状況を記述しその構造に建築を位置させる。風や光などの微時間的に変容する素材に受動的な人間の建築を試作した。これらのアプローチから「線を張るとき」における、建築をつくる前に考える取り巻く状況への態度を思考し線とは、人間や物の作ってきた運動の軌跡と考え、その軌跡を取り巻く状況に架けるときの態度(張力)を考えることであると捉えた。以上を踏まえ、自己変容を導く他者性を許容する建築の態度と、変化に受け身であることに意識的な建築の態度の両義性をもつ建築を3つのProjectで提案し、多元的価値観と「偸む」ことによる非関係の共存の形を提案する。Project 本店では、元オフィス兼倉庫であった建築を人間のためではない建築へと解体した。既存建築の持っている建築的エレメントの機能をなくすことで、形態そのものもつ取り巻く状況への影響に焦点をあてて建築した。穴の開いた屋根によって、光や土、風の流入を受け入れ、残された建築の一部によって自己の居場所を探していく建築を提案した。Project 公民館では、熱海市下松田町の公民館の新築を行った。公民館の性質から多様な活動を行える空間を構成すると共に、世代を超えて利用できる建築を提案する。また、機能の変化に対応し植生や地形の変化を受け入れる建築を提案する。動的なフレームワークを用いることで建築の形態を衝突させ、偶有性を含む形態をスタディすることにより、建築そのものが取り巻く状況に影響を与え、多様な行為に対応する環境としての建築を提案する。Project 住居では、改修によって幾度の時間を重ねてきた建築において改修の提案を行った。改修によって積み重なった部材や多重的空間に、改修の手法として暮らしの本質的変化をつくる建築エレメントを挿入し、周辺の暮らしや空間によって建築を分解した。本質的な変化から得られる副次的な影響を受け入れ、積み重なった建築行為が生活によって分解され無意識な中に溶け込む建築を提案する。







