ARCHITECTURE THAT GAINS PERMANENCE THROUGH COLLECTIVE MEMORY

集合的記憶により永続性を獲得する建築の提案:アルド・ロッシの「モニュメント」の概念に着目して(M2 土屋遼華)

本研究は、個人の記憶や文化を共有する集団の集合的記憶に着目し、それらを想起させる空間性を備えることで、用途の変化を超えて永続的に活用され続ける建築の在り方を探求するものである。その際、建築の永続性について、アルド・ロッシが『都市の建築』において提示した「モニュメント」の概念に着目しながら、その実体や設計手法について、現代の日本で体験的な記憶に作用する新たなアプローチを模索する。まず、ロッシの「モニュメント」の概念を、理論的に整理した。「モニュメント」とは、「永統性」「推進的要素」「場所性」という性質を持ち、形態としての不変性と、時間と共に変化する機能や様式が集合的記憶によって調停されることで成立する。また、ロッシは類型と類推を通して、人々の記憶に内在する事物を想起させる建築が永続性を獲得すると考えた。炊に、ロッシの建築作品および先行プロジェクトの分析を通して、類型の抽出方法と具現化の手法を調査した。ロッシの設計では、設計者の個人的な記憶や体験に基づくイメージが、純粋化された幾何学形態や構成原理として抽出され、反復や構成操作によって建築化されていることが分かった。一方で、このような抽象化は、日本的文脈においては感情的な記憶や体験との結びつきを希薄化させる可能性についても把握した。これらの分析から、個人の記憶や過去の体験に結び付くための要素として「懐かしさ」に着目し、筆者自身のスケッチや日本の心象風景画の分析を通して、形態だけではなく状況や身体感覚を含んだ物語性のある要素を類型として捉えた。これらを用いることで、単なる事物の連想ではなく、より感情的・個人的な記憶に結び付く類推作用をもつ建築の可能性を検討した。以上を踏まえ、長野県飯山市を対象敷地として、廃線となった旧駅舎の敷地に、バスターミナルと共同住居からなる建築の提案を行った。各シーンでは、抽出された「懐かしさ」の要因としての共有体験が生み出され、第一段階で住居であった空間は、住人の生活やバスターミナル利用者の行為や感覚によって転用後の用途や形態と調停され、淡の段階の空間に内包されていく。本研究では、アルド・ロッシの「モニュメント」の概念を援用し、日本における記憶に作用する類型の在り方を「懐かしさ」に着目して捉え直し、永続性を獲得する建築を模索した。