ミラーと鏡:顧みるためのメディア建築(B4 梶原杏平)
本計画は、人間の認識に作用する建築のメディア性に着目し、日本における社会的弱者への偏見や不理解を解消し、ひいてはマジョリティのマイノリティに対する行為を、彼ら自身が顧みることを促す建築を構想する試みである。ここでは、日本におけるエスニック・マイノリティ(民族・文化的少数者)と日本人の関係性を題材に考える。愛知県名古屋市の外国人居住者数は、全国的に見ても多く、約10万人(令和6年末時点)を超えている。本計画では、その名古屋市内でも特に外国人社会としての特徴が顕著な地区である栄東、9番団地、名古屋入管局周辺を敷地とし、社会的弱者を対象とした用途と一般市民が利用できる用途を複合した施設を提案する。具体的には、上記の順に母子支援施設・食堂とコンビニ、教会とバス待合所、裁判所と駅といった組み合わせである。これにより、日本人と在留外国人の交流における関係性を再編するとともに、建築によるモニュメンタリティによって、官民へのバタフライエフェクトの発生をめざす。現在の情報社会において情報接触の画一化は激しく、同一の意見が集積することによって起こるエコーチェンバーが指摘されている。情報の加速化に伴うメディアの在り方は、情報を知覚する方式においても変化していくことが考えられる。これを踏まえれば、形として存在する建築が発揮するメディア性を、人間の知覚を新たな方式に転回する要素として用いることができるのではないだろうか。これまで、ときに建築は過去の記憶を継承するためのモニュメントとして活用されてきた。これに対し、それ自体に帯びる意味が流転する性質の実現を模索することで、今現在の状況を批評的に表象するメディア的性質が発露されると考えた。ここで示す新たな知覚方式は、加速的に追加される情報社会の現状で、接触する情報が画一的ではなく多元的に提示されることによって、体験者の判断を一度保留する状況に転回させる。設計手法としては、エレメントの持つ意味〈ミラー〉が、ある条件下に置かれるとその逆の意味〈鏡〉が表象されるような、モニュメンタリティをもつ状態を設計する(図4)。形態から得られる理解が往来したとき、体験者において情報判断の遅延が発生する。設計言語にはエスニックマイノリティに関する表象文化を引用して形態を決定し、マイノリティの実情を疑似体験することで彼らの立場を体験する。客観的事実を引用することで、設計者の意図を超えた形態を作り出し、形態への解釈の余白を残すことを可能にするような建築をめざした。(赤れんが卒業設計展2026 100選)






