リ・リ・リフレーミング:日常の風景を再編する建築(B4 鈴木利康)
長野県上田市にある上田映劇周辺を対象敷地とする。上田映劇は1917年に前身である「上田劇場」が創業し、映画上映により上田の娯楽の拠点であった。客足の減少や市内に大型シネコンが参入したことも影響し、2011年に定期上映を停止したが、2017年からNPOが保存・拠点運営を担い、定期上映を再開した。現在ではコミュニティシネマとして映画文化を通して地域活性化に寄与している。しかしながら、上田映劇周辺では住宅需要の増加やモータリゼーションの進展に伴い、中層マンションや駐車場が増加し、画一的な土地利用がなされることによって、街並みと人の活動が織りなす日常の関係性を弱め、街の風景を希薄化させている。 本設計では、都市風景の豊かさが多様な意味の重なりによって生まれるものと捉え、単一の機能に収斂することで均質化が進む地方都市に対し、複数の解釈を許容する多義的な建築の提案を通して日常を再編することを目的とする。 設計を進めるにあたって、映画体験に着目した。劇場で作品世界に没入した鑑賞者は、作品に共感しつつ自己を投影し、自身の価値観や生活環境を作品内容に照らし合わせる。その体験は鑑賞後の移動過程を介して日常へと持続的に接続され、都市を構成する断片の解釈を変容させる。すなわち映像作品は鑑賞者に新たな視点を付与することで、同一の都市の要素に対して異なる意味生成を促している。本設計では、この意味生成のプロセスを建築に置き換え、映像制作会社、集合住宅、書店を3つのサイトに計画する。その際、求められるプログラムと周辺にある既存のエレメントに対して、多義的な意味生成が行われるよう、異なる用途やマテリアルを付与していくことで、単一の意味に回収されないような状況をつくり出す。このプロセスにより周辺環境の見え方や行為の可能性を更新し、日常的要素同士の関係性を再編する。 例えば映像制作会社ではオフィス空間に対して、道として使われるプログラムを付与することにより、オフィスであり道である見え方が現れ、オフィスの持つ単一の使われ方を変容させていく。また、このような操作を各敷地の条件に応じて複数組み合わせることにより、鑑賞者が映画体験を通して都市の断片を捉え直すのと同様に、空間体験を通して上田映劇周辺の日常を再解釈し得る視点を生むことを目指す。(JIA第35回長野県学生卒業設計コンクール大学の部 銅賞)






