アピールポイント:火葬場における日常的実践としての反抗(B4 武藤颯汰)
東京都新宿区新大久保は、戦後は閑静な住宅街であったが、そこから在日韓国人の定住が契機となり、日本最大のコリアンタウンを形成した。その後の韓流ブームにより、新大久保は若者が集まる流行の中心地・観光地となった。そこでは、場所が適切に整備されていないため、観光客は他人の敷地に無断に立ち入って露店で買った食べ物を喫食することが常態化している。一方、住人は観光客らが敷地に入らないように、名前が書かれたパイロン、プラスチック製のチェーン、タコ糸などで即興的に境界線を引いている。双方の実践の応酬は、俯瞰的に視ると行政の観光地化の推進に起因しており、行政あるいは都市に対する「日常生活における政治」として生きられていた。そこで本計画では、この後景化されている「政治」を表象するために、ミシェル・フーコーが提示した「へテロトピア」の概念―「文化のうちに見いだされる他のあらゆる現実の場を表象したり、転倒させたり、またそれらに戦いを挑んだりする対抗の場であるような現実の場」(Foucault, M 1986 ”Of Other Spaces”)―としての公共性を持つ火葬場を、行政の介入によって様相が変化した西大久保公園に設計する。この火葬場は壁が並行して建つルールにすることで、通りからの騒音を対策しつつ、葬式の流れを純粋に表す形態とした。そして、壁の一部に大きな建具をしつらえる。この建具は式形態および利用状況、また内外の融和のために用いられる。火葬場利用客や運営のためになるような建具が開閉されることによって、副次的に火葬場外からの人々が入り込むことを許容する。そして、火葬場利用者以外の人々によって、公園のように空間が使われることを目指す。 この「公園として使いこなす」という日常的実践は、市民にとって都市における主体性を獲得するものであり、その実践またはそれによって表出される異質な風景が、行政の計画の齟齬に対する「日常生活における政治」として異議申し立てを表象する。






