生活が周縁にふれるとき:境界の再構成による児童養護施設の半外部化(B4 井上雄太)
現在、児童養護施設は、大舎制から小舎制への過渡期にあり、「小規模化・地域分散化」が政策目標とされ、多くの施設が小規模ユニットによる構成となっている。本計画で対象とする群馬県太田市熊野町に位置する「東光虹の家」も同様に、大舎制から2017 年にオールユニット化され、子供たちのプライバシーを守りつつ、より家庭的な養育のしやすい環境が目指された。しかしながら、「閉じる」ことで守られるものがある一方で、「閉じすぎる」ことで失われる関係性もあるのではないだろうか。ユニット化によって日常的に関わる人の固定化が進み、生活が「内部完結」するようになってしまっている。他のユニットの子供たちや職員、さらに地域の人々が日常的に関与できる生活スペースの不足により、社会性を培うための重要な機会が失われている。つまり、人・行為・ケア・関係が社会から切り離されて不可視化されることが問題として挙げられる。そこで本計画では、閉鎖性と開放性といった、相反する要素が混在する児童養護施設において、建築的操作により、境界を、人と空間、人と人の「関係性を媒介する装置」として捉えなおし再構成を行う。生活が「内部完結」せずに外部にあふれ出すことにより新たな関係性が構築される児童養護施設を提案する。対象施設で勤務している職員へのヒアリングにより収集した、入所している児童や勤務する職員の日常的なふるまいと周辺環境を構成する特徴的な建築要素を手がかりとして、空間を組み立てることにより3つの段階で境界の再構成をしていく。1つ目は地域や街に対する境界で、地域住民や同法人施設との関係性が生まれる活動的な空間と、部分的に閉じることを可能にする空間を創出する。2つ目は居住ユニットと管理棟や地域交流スペースのゾーン間の境界で、その空間を利用する人が限られていることを踏まえ、人の動線を誘導するデザインや設えにより、特徴的な空間を創出する。3つ目は居住ユニット内の共用部分と個室の境界で、最もプライバシーが強く意識され、言葉にならない意識レベルの境界が作られる空間を創出する。児童養護施設という地域の中で異質な存在になりがちな施設において、地域住民の生活の延長の場として日常的に使われることにより、自然と地域に溶け込み、より「家庭的な環境」で養育することが可能になり、かつての地域に存在した住民同士の共助関係のような在り方を実現できるのではないかと考える。このようにして生活が地域の中で行われるような児童養護施設の在り方を境界の再構成をもって試みる。(『近代建築6月号別冊 卒業制作2026』掲載)






