昭和期住宅史において吉田五十八,堀口捨己,谷口吉郎,村野藤吾とともに和風を手がけた代表的建築家の一人と捉えられてきた白井晟一の住宅作品における床の間の意匠について,真行草の観点から,他の建築家による事例との比較を通じ,その特徴を考察した。白井の床の間は,本床や本床に準ずる形式が大半を占め,その他は踏込床の事例が見られた。さらに真行草の観点に基づく数値化による意匠の検討を行った結果,他の建築家と比較して,白井の床の間は,「真」の性格が強いことが読み取れた。床の間の原型を祈りの対象となる祭壇に見ていたことの影響と考えられる。
羽藤広輔:白井晟一住宅作品における床の間の意匠について ―真行草の観点による同時代建築家作品との比較から―,日本インテリア学会論文報告集,第26号,pp.57-62,2016.3