秩父銘仙美術館
(「建築・デザイン工学設計製図Ⅲ」提出作品/B4 山越伊織)
埼玉県秩父市には秩父銘仙という国の伝統工芸品に指定されている秩父市特有の織物がある。大正~昭和期に大繁盛したが、戦後のライフスタイルの変化によりその需要の低下とともに工場数は激減し、後継者不足や若者離れが問題となっており、秩父銘仙が市民にとって身近なものでなくなってきてしまっている。そこで本計画では、秩父銘仙の反物や着物、秩父銘仙を使用した現代アートなどを展示する美術館と、秩父銘仙を織る工房が複合した施設を設計することにより、市民が秩父銘仙を身近に感じられ、かつ秩父銘仙の現代における価値を見出すきっかけとなる様な施設を提案する。また設計においては、一階部分にホワイエや工房設けてそれぞれの物理的境界をなくすことで美術館と工房の空間を緩やかにつなげ、美術館を訪れた人が必然的に機織りの雰囲気を味わえる様にする。主に二階以上は逆ヴォールトの異なるボリュームを並べ、その内部に展示空間を設ける。自然採光を上部から取り逆ヴォールト内部の曲面反射を利用することで、従来のホワイトキューブ型の展示空間に比べ展示空間内の明るさを均一にする。展示方法としては、秩父銘仙の裏表のない特性を活かすため、天井の中心にワイヤーで吊るし360度どの角度からでも鑑賞できる様にする。また造形的な面では逆ヴォールトのボリュームを並べる際、美術館それ自体が一種の織物を表現する作品となるようなものを目指した。