雪降るまちの「変容する建築」の構想(M2 髙橋真由)
本研究は、“季節”という時間軸に応じて、特に周辺環境の変化が著しい雪国において、そのものの姿形を「変容させる建築」のあり方を探求するものである。建築を取り巻く日本の風景となる豊かな自然は、季節の移り変わりで木々が変容し、季節性のある限定的な美しい風景を形成する。一方、建築は、移り行く季節の中で、数十年姿形を変えぬままそこに佇む。このような矛盾した建築のあり方に対して、季節の時間の流れとともにその姿形を変化させる建築をここでは「変容する建築」と捉える。本研究では、上記のような「変容する建築」という視点から、雪国のもつ気候やそこから生まれた文化的背景、雪の物理的な特性や変化に着目し、雪国の周期的な変化に合わせて「変容する建築」の設計手法を提案する。具体的には、はじめに「雪国における変容のリサーチ」を行い、プロトタイプとしての住宅の提案(prototype A ,B)、「スイッチする駅」の提案(Project)を行った。Prototype Aでは、雪国に潜在する変容の要素のひとつとして挙げられた「タネ」と呼ばれる深さ1.5m程の水路を季節通して活用しながら、周辺環境から耐えるための固い建築の要素である屋根形状に着目し、雪国における“変容する建築”の提案を行った。Prototype Bでは、外部環境からの影響を遮断する大きな要素である建築の「外皮」を布の重なりに変換することで、気温の変化とともに変容する住宅を提案する。気候によって外皮(=布)の厚さ、質感が変容する建築は、気候のちょうど良い季節にはめくりあげ、寒い季節にはニットにコートを着込むように布が重なる。その振る舞いから季節感が外皮へと伝わり「変容する建築」となる。Projectでは、冬季のみ機能する国内唯一の新幹線臨時駅であるガーラ湯沢駅の新駅舎を提案する。この駅は、スキー場と直結し、レンタル施設やスキー場へとつながるゴンドラが備えられ、駅に降りると
すぐにウィンタースポーツを楽しめる「コンビニ型」の施設と言える。ウィンタースポーツを楽しむための機能が一つの箱に収められたこの施設の利用者にとって、“雪国らしさ”を感受する視線は、駅に降り立ち初めに見る風景にではなく、目的のみに向けられている。こうした状況を変換すべく、雪の積層、雪解け水の水位の変化による建築の変容とともに内部機能も変容し、四季を通して機能する建築を提案した。





