ADHOCRACY OF HOUSING

住宅のアドホクラシー —即興的更新手法の提案—(M2伊藤雄大)

本研究は、住宅において、住人の欲求や社会環境の変化に対し、即興的に改修の設計、施工を行っていくような、常に未完成である魅力を備えながら変化を許容する建築のあり方を探求するものである。通常の住宅はその土地に建築された時から、役目を終えて取り壊される時までその姿をほとんど変えない場合が多い。一方で住人の空間に対する欲求、外的要素、社会的な環境などの要因は常に変化し続ける。このような矛盾した住宅のあり方に対して、住宅を取り巻く要因の変化に応じて常に更新し続ける住宅をここでは、「アドホック(即興的)住宅」と捉える。本研究はProject1とProject2に分かれており、それぞれのプロジェクトにおいて住宅の「即興的更新手法」について考える。これらを行う上で主にDIYによって空間をカスタマイズしていく方法を用いている。DIYで問題を解決しながら暮らすことで住宅についての理解を深め、既存の都市では獲得し得ないような豊かな空間を獲得する。Project1では戸建住宅のスケールで「即興的更新手法」について考える。即興的更新のベースとなるフレームは1スパン2,250mmとし、縦5スパン×横5スパン×高さ2スパンを基本として設計する。初めに周辺敷地調査として、DIYをするために必要な材料や技術が手に入る場所、店をプロットしていった。DIYで住宅を更新していく上で材料の入手経路をあらかじめ確保しておくことは重要であると考えたためである。次に住人が生活する中で起こりうるイベントを50件想定し、それらを工期別にまとめて20年間分の年表にランダムに配置した。その年表から、竣工時を含めた5つの時点に注目し、ひとつひとつのイベントに対して、DIYによってどのようにアドホックに対応し、カスタマイズされるのか、さらに20年間全体を通して「即興的更新手法」によって住宅がどのように姿を変え得るのかという変遷を辿る。Project2では街区のスケールで「即興的な更新手法」について考える。既存街区の境界線及び住宅の一部を解体し、即興的更新のベースを設け、それに住人らが手を加えていく。さらにDIYを行うたびに、その方法を記録するための「手順書」を作成し、共有する。即興的更新によって街区がどのように姿を変えるのか、そしてそれが住民同士や街との関係にどのような影響をもたらし得るのかについて考える。