情景を創出する空間体験 -遮蔽縁によるシークエンスとシーンの構成-(M2 木村勇貴)
本研究は、人間の移動による、視覚的変化から知覚されるシークエンス景観に着目して、「情景を創出する空間体験」を探求するものである。私たちの体験する空間は、連続的な経験や個人の感情より、見え方や感じ方が常に変容している。例として、遮蔽物により隠された景色が、徐々に現れる様子に魅力を感じるなどが挙げられる。これは、歩行や視線移動といった身体的な動きに応じて、景観の視覚的変化が私たちの知覚に、複雑に影響し合っているため引き起こされる。よって本研究では、上記のような空間体験という視点から、人間の移動に伴う視覚的変化とその空間構成との間に、どのような関係性があるのかを分析する。得られた知見をもとに、ギャラリー兼展望台を設計することにより、「情景を創出する空間体験」の構成手法を提示する。初めに、既存建築からの読み取りでは、視覚体験の展開を遮蔽縁の描出により、空間体験における分節点の存在と、様相に影響を与える15の遮蔽縁の類型を見ることができた。次に、遮蔽モデルによる情景図式の検討では、単純遮蔽モデルと複雑遮蔽モデルを作成し、遮蔽が空間体験に与える影響を確認した。単純遮蔽モデルからは遮蔽の差による奥行き感の差や、連続した遮蔽から想起される経路の認知、余白空間の知覚などの知見を得ることができた。複雑遮蔽モデルからは、覗き込みたくなる、裏側を見たくなるなど、遮蔽によって様々な身体感覚を与えられることや、中景-遠景の遮蔽は、空間を閉じるような印象を与え、経路を限定する効果があるいう知見を得た。また、分節点の重要性や遮蔽縁の類型の有用性を再確認し、設計の足がかりとすることができた。最後に設計では、旧飯綱高原ゴルフコースを敷地とし、視点場とそれらを繋ぐ経路からギャラリー兼展望台を提案し、敷地の有効活用を図るとともに、敷地のポテンシャルを最大限出せるような空間体験の提示を行なった。本提案により、遮蔽縁や遮蔽の配置などから作られる視覚体験によって「情景を創出する空間体験」を構想することができたと考えられる。
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