TOURING

巡り
旧公共施設を再利用した酒蔵の提案(B4 鈴木綾乃)

兵庫県三木市吉川町は、酒米「山田錦」の生産量全国一位を誇る田園地帯であり、かつて多くの蔵元が存在した。しかしながら、灘五郷や伏見地区といった酒どころとの過酷な競争と日本酒市場の縮小化により、三木市内の蔵元は減少し、一軒を残すのみとなった。また、過疎化や高齢者人口の増加に伴う公共施設の再配置は同地域でも話題となっている。そこで本計画では、統廃合により生まれた空き公共施設を再利用し、見学空間を備えた酒蔵を計画することによって、人の流れを形成しながら、吉川という場所の特徴を保持し、さらに酒蔵の次世代のあり方を提案する施設の設計を行う。具体的には、酒蔵、見学施設、カフェ、ショップの四つの機能からなる複合施設とし、設計に際しては、既存の躯体、天窓を最大限に活かしながら、日本酒を醸造する際に必要となる高低差を既存建物に与え、これらの高さの異なる空間を多様な動線で繋げる計画とした。来訪者のための動線は建物内外に張り巡らされており、決められた順序で見学するのではなく、それぞれの興味に合わせて自由に見学が出来る構成とした。また、酒蔵としては昔ながらの醸造の流れである上から下への動きを残しつつも、必要最低限の高低差にすることで、無駄な動き、動線の乱れを整理した。酒蔵で目立つ閉鎖感を取り除き、様々な角度から内部を見学できるという形が、地域の良さを発信しつつ、次世代の酒蔵のあり方に繋がるものと考えた。

図面データ 1

図面データ 2

図面データ 3

鈴木4

鈴木5