A HOME THAT EMBRACES A VARIETY OF FEELINGS

多様な感受を包容するすまい(B4 伊藤雄大)

昨今の日本では、世帯人数の減少やプライバシー意識の高まりなどの影響で、住まいに対する考え方が変化しているように感じられる。住まいは今まで以上に閉じられた空間になり、地域への関心や愛着が失われている。これは戸建て住宅、集合住宅どちらにも当てはまるものと考えられる。特に集合住宅において元来の メリットのひとつである「豊かな公共空間の獲得」が失われつつあると言える。そこで本計画では、現在の集合住宅の住戸のプログラムを解体して新しい生活空間と共有空間について考え、居住者のその時々のニーズに応えることで建築自体が変化し続ける集合住宅を提案する。具体的には、居住空間である「ボックス」や、動線となるスラブに可変性を持たせることにより住民の居場 所が、住民による活動の内容によって、大きさや位置を変更することができる計画とした。これによって住戸のプログラムは柔軟性を持ち、時間の流れや人の流れと共に絶えず変化していくものとする。この集合住宅の中では、住人による多様な活動と周辺環境の組み合わせによって、その時限りの多彩な光景が溢れている。「ボックス」は住戸や店舗として使用され、所有者の個性が外壁などに現れて、建築全体に多様性をもたらす。この建築が持つ社会や環境の変動に対する自律性や柔軟性、住まい手の個性の空間への発露といった特性により、今日の住まいのあり方に新たな可能性を提示することを目指した。(JIA 第30回 長野県学生卒業設計コンクール 大学の部 金賞受賞/NAGOYA Archi Fes 2021優秀賞受賞)