MASUO IKEDA MUSEUM

池田満寿夫美術館:その作風の変遷に着目して(B4 安東真生)

池田満寿夫(1934-1997)は、日本の画家・版画家・挿絵画家・彫刻家・陶芸家・作家・映画監督など、従来の芸術の枠にとどまらず多彩に活躍した芸術家である。1934年、旧満州国に生まれるが、学生時代の多くを母の出身地である長野市で過ごした。その後、上京し、画家として多くの成果を上げていく。1966年には、第33回ヴェネツィア・ビエンナーレにて版画部門大賞を受賞し、版画家として世界的に認められた。満寿夫の作品のテーマは一貫して「女性」であり、その官能的な作風からエロスの作家と呼ばれた。一般的に受け入れられ難い作風であることや、多岐に渡る活動から、世界的に活躍したにも関わらず満寿夫の認知度は他の画家に比べて低いのが現状である。また、満寿夫が死去した1997年に新設された池田満寿夫美術館は、約20年の開館を経て2017年に閉館した。この美術館に展示されていた作品は現在も所蔵庫に収容されており、人の目に触れることなく眠っている。そこで、本計画では、満寿夫の作品をもう一度鑑賞できる場を作るとともに、満寿夫の生涯を体感する美術館を設計する。具体的には、満寿夫は生涯で四人の女性と交際し、その出会いによって作風の変化が見られることから、四つの展示空間に分けることでその変化を感じる構成とした。また、満寿夫の出身校である長野高等学校が見下ろせる地附山公園を敷地に選定し、その斜面地という特性を活かしながら、来訪者が地中から地上へと緩やかに登りながら作品を鑑賞することで、満寿夫の低迷期から栄光を掴むまでの画家人生を体感できるような施設を意図した。満寿夫の生涯を辿り、所縁ある場所との調和の中で、鑑賞者が満寿夫の作品に対する理解を深めていけるような建築空間を目指した。