A CHANCE ENCOUNTER WITH THE SCENERY BEHINDE THE CITY

後景との会遇 -善光寺平用水沿路再編による暮らしの提案-(B4 濱田紀之)

長野市には用水が張り巡らされている。その中でも、善光寺平用水と呼ばれる農業用水は、裾花川から取水した長野中心市街地の用水の源流であり、長い間多くの人々の生活を支えてきた。しかしながら都市開発が進むにつれ、用水は暗渠化し、人々の生活と水の関係は希薄になっていった。暗渠は人間の都合によって出来てしまった都市開発の負の遺産と言えるが、見えないからこそ、暗渠は街に潜むネットワークとしてのポテンシャルを持ち、人々が寄り添う余地がある。都市の裏側だからこそ生まれた風景が存在する。前プロジェクト「暗渠と人のあいだに」ではこの見えない流れを利用し、用水沿路に存在する「暗渠要素」に対して強調操作を行い、「暗渠モニュメント」として再構築することで、水路上に環境体験を孕む歩行空間を設計した。その結果、街に人々の短期的滞在、回遊のきっかけが生まれた。その計画の延長として、本計画では水路沿いに地域住民が集い、交流可能な共有空間を持つゲストハウスを3つ提案する。それぞれの敷地が持つ特性の分析による手法の他に、共通の設計手法として水路沿いに点在する街の要素を抽出し、それらを元に人々の活動、居場所創出を行う方法を提案した。これにより水路を介したささやかな繋がりを感じつつ、裏に溶け込むような暮らし、中長期的な滞在が生まれる。前プロジェクトと合わせて、善光寺用水沿路が段階的に、それぞれの場所ごとに再編していくことにより、街全体が水路を軸として繋がりを持ち、賑わいを取り戻していくことを目指した。(JIA 第32回 長野県学生卒業設計コンクール 大学の部 奨励賞)