能動性を廻す -集団的創造性を醸成する醸造所関連施設の提案- (B4 小池太一)
長野県下諏訪町萩倉地区は豊富な水源や冷涼な気候を活かし、明治時代以降製糸業や農業が盛んに行われ、住民の生活と萩倉の環境が密接にかかわっていた。しかしながら、現在では他地域に就労している住民が多く、暮らしと労働と環境との関係性が失われつつある。その結果、豊かな自然との関わり合いが減少することで萩倉での生活に魅力が減少し、集落の維持が困難になることが予想される。そこで本計画では萩倉の地域特性を活かしたビールづくりに伴う建築群を設計し、産業を中心とした地域ネットワークを再構築し、住民が能動的に萩倉という地に関わることができる小さな社会圏のあり方を提案する。具体的には主に4 つの建築を段階的に設計する。一つ目に工場に隣接する広場を設計し、様々なイベントや地
域の行事を行える場所とする。二つ目にクラフトビールや地域で栽培されているブルーベリーなどを販売するスペースを設計する。三つ目に萩倉の地理的特徴を活かしてホップ畑を整備し、その生産を萩倉で行うことでビール自体の価値の向上や地域住民の関わりしろをつくる。そして最後に集落外部からの集客を目的として飲食スペースを設計する。以上によりその集落が閉じるのではなく、他地域ともネットワークを繋ぐことで持続可能性の向上を目指す。また、設計過程において萩倉で継承される技術や建築的工夫を提案する建築に落とし込むことで、今後萩倉で様々な場がつくられる際のアーカイブ的存在として活かされ、住民の能動性を助ける存在として地域に残ることを考慮した。さらに、萩倉地区で自身設計者が行ったスケッチに、建築的操作法を加筆した「はぎくら仮想手記」を本にまとめ、地域に残すことで、住民の空間リテラシーを醸成し、住民が主体的に萩倉をデザインしていくことのできる状況の形成を意図した。






