LIVING AT THE DIFFERENCE BETWEEN “TOPOGRAPHY” AND “ARCHITECTURE”

「地形」と「建築」の差異に住む —野沢温泉村における多様な居場所の再考—(B4 柳町一輝)

長野県北部に位置する野沢温泉村は日本有数の豪雪地帯で、スキー場や温泉を主とした観光によって発展してきた。この地域では、限りある資源を互いに尊重することで共有し生活の一部として利用している。野沢における人々の居場所のあり方を分析すると、集中的に集まる温泉資源と傾斜のある地形によって濃淡ある多様な居場所が獲得されていた。つまり、自然の大地がつくる地形の複雑さと人間のために造成された構造物の均質さとの間に居場所が造られている様子を読み取ることができた。そこで、野沢における3つの異なる地形から居場所を構想し、大地と人工との新しい関係を提案する。提案する施設の用途は住まいかたの多様性を内包するシェアハウスとしている。移住者と住民との接点となる居場所としながら、野沢の多様な居場所を感じ取り、来訪者が自分で居場所を発見できるような建築を意図した。具体的には大地と建築とのギャップとも言える擁壁や基礎を土地との対話の中から操作し、人の生活空間に溶け込ませることで居場所を形成する。土地との対話で生まれた居場所は、野沢における居場所のあり方と呼応し、移住者の居場所となりながら住民の居場所としても存在の意味を見出す。この建築では、人工物との対話により地表から隆起するように立ち上がる大地に、連続的かつ発見的に居場所が創造される。本計画は、大地と建築との関係性を再定義することで、野沢における居場所を再考する建築の提案を試みる。(JIA 第32回 長野県学生卒業設計コンクール 大学の部 奨励賞/NAGOYA Archi Fes 2023 伊藤維賞)