森本新地劇 −多様な物語が躍動する駅前空間の再編−(B4 杉山隼斗)
⽯川県⾦沢市に位置するJR森本駅において令和3年に竣⼯した東⼝駅前広場は、新たな地域⾏事や催し物が企画され、集いの場として認知され始めている。⼀⽅で駅周辺には様々な物語(⾵景や物との関わりの中で繰り広げられる様々な⼈々の活動、⼜は⾵景そのものを指す)が存在しているにも関わらず、空間的には分断され、それぞれが孤島化した様相を呈しており、以前の駅前空間のような偶発性に⽋けると共に、憩いや賑わいが単発的に留まっている様⼦が⾒受けられる。そこで本計画では、分断されたそれぞれの物語を紡ぎ直しながら、駅前空間の⼀体的な再整備を提案する。計画の⼿掛かりとしては、現状の広場を観察した際に発⾒した、駅前の松並⽊という物語がシンボル化され、広場内の松のツリーベンチとして転⽤・蘇⽣されている現象から着想を得て、周辺に溢れるそれぞれの物語の⼀部を切り取り、転⽤・蘇⽣することで再編し、⼀体的に新たな場と⼈の流れを創り出すことが可能ではないかと考えた。具体的には、駅前空間での物語の構成要素を読み取り、それらに解体、転⽤、建替などの操作を与えながら、駅前空間に求められる地域機能の新たな連関に参加できるよう、駅前ビル「ファミレ」の改修、駅舎の改修とそれらを繋ぐデッキ含めた広場の再整備等を⾏った。特に「ファミレ」には⼤衆演劇の為の演芸場が含まれており、そこで定期的に⾏われる商店街⼀座による地芝居などの活動が、より強固な⽂化へと昇華していくように連関の核として計画した。周辺に溢れる物語たちが、集いの場としての需要が顕在化した駅前空間において躍動して⽴ち現れ、地域住⺠の発⾒的な読み取りを促して認識される事で、地域のアイデンティティへと昇華する空間を⽬指した。





