公共を畳む —伸縮する公共施設の提案—(B4 岡部志保)
現在の地方都市の抱える大きな問題として、人口減少による住民数の減少や高齢化が挙げられる。人口増加時代に公共施設の整備が進んだが、公共施設に対するニーズの変化や予算の減少により、公共施設の再編が検討される時代になった。この流れは本計画敷地の長野県埴科郡坂城町中之条地区でも顕在である。そこで本計画では、中之条地区の行政機能を担う坂城町文化センター、町立図書館、老人福祉センターという3 つの公共施設を対象に、減築操作により、用途によって伸縮できる空間を持つ公共施設を提案する。具体的には、各室が外部空間に接するように減築することで、施設内で行われるプログラムや利用人数により室を伸縮できるように計画した。室の伸縮により公共施設は町の日常にも非日常にも対応できる。改修後の文化センターでは、普段は生涯学習講座の教室として利用されている室が、休日のイベントや展覧会の際にはテラスとつながり、1つの大きな広場として2階が利用される。また、町立図書館では東側の半屋外空間により隣接する文化財との空間的なつながりを持たせた。子どもの居場所への地域のニーズに応え、児童コーナーや学校に行くことのできない子どものための教室空間を設けた。福祉センターでは町に住む高齢者の増加に伴い、高齢者と町民の交流を促す集会室を計画した。集会室をつなげると、大きなリビングのような空間になり、多年代の交流が行われる。本計画では、3 つの施設の床面積を減少させ、公共施設を畳んでいく。しかしながら、それはマイナスな変化ではなく、むしろ室の伸縮により公共施設は様々なプログラムに応え町の活動を支える空間になり、公共施設の縮小によって町が豊かになる可能性を提示できると考えた。





