INHERITING THE MEMORY OF CITY

街の記憶を次世代に -モンゴル国立大学1号館のリノベーション提案-(M2 ダワーゾリグ ノムーン)

現在のウランバートルは急速に発展し、最新技術で建てられた建築が増える中、伝統的な建築物を保存再生する意識が薄く、すでに解体された例もあることから、若い世代に都市の記憶を継承するため、歴史的建築物の保存と再活用の提案が重要であると考えた。本研究では、日本の歴史的建築物の保存再生・活用の事例を参考にし、また敷地となるバガトイルーの歴史やモンゴルの歴史的建築物の現状を整理した上で、既存のモンゴル国立大学1号館を対象に、学生や地域で働く者に向けて歴史のある地域的特色との連続性を持つ建築のリノベーションを提案する。モンゴルの大学では、寒い時期が長く学校生活は建物内で過ごす時間多いので、キャンパスの形式は、一つの建物の中に教室が並ぶだけの簡便な形式となっている。対象の校舎は、主に理工学部の教室として使われているが、学生や教員たちの授業以外のアクティビティを許容する空間が不足しており、昼休みなどの自由な時間を過ごすことのできる唯一の居場所は、廊下に置かれた椅子のみである。これからの大学のあり方を考えれば、保健室や体育館、食堂などの機能を整備しつつ、人々の居場所となり、その活動を支えるためのスペースが必要であると考えた。そこで本計画では、敷地内での学生のニーズに応えた共有空間をつくることを目的に、既存建物の魅力を保存しながら学生が能動的に学ぶことができる場所を提案する。まず、既存建物建設当時の古典主義様式を尊重し、外観の変更をせず内部の空間構成を新しく計画する。建物の最も特徴的な意匠を示す中央部分を保存し、主に研究室のある建物の両端部を改修し、そこに繋ぐ増築計画を行う。学生以外の人にも使いやすいように動線を整理し、両端部の1階では主に地域に開いた大学関連のギャラリーやカフェを設け、部分的に3階の天井までの吹き抜けとするなど開放感のある空間とする。既存の研究室を学生のサークル・部活といったコミュニティのための部屋として活用し、また、敷地全体の価値を高めるため、新しい通り抜けのエントランスを設け、十分に使われていない中庭を地域の一般の人々に開き、新設した開口部を通して中庭が直接見えるように計画した。さらに、既存の両端から繋ぐような学生や教員だけのプライベートな増築空間を計画し、既存の樹木を避けるような平面計画としている。その外部は既存建物の景観に配慮したミニマルな意匠とし、中庭に面した部分には、デッキを設けるなど、全体的に中庭を囲んで、賑わいが生まれるような空間を計画した。