地方都市の時間世界 —他者の連関と共にある祈りの暮らしの構想—(M2 西本昌平)
本研究は、人以外の事物(以下、他者)の連関の中で認識される時間世界(正確に進み、戻らない時間の進み方ではなく、時にゆらぎ、ある周期で同じ営みが戻ってくる時間の進み方を指す)の視座をデザインに取り入れることによって新たな地方都市の住宅街の像を描く試みである。地方都市の住宅街は、資本主義を象徴する存在の一要素であり、そこにいる人々の暮らしはその人工的な構造を維持するための商品であると捉えられる。そこには核家族を基本単位とする政策-金融-交通を軸とする連関があり、教育機関-職場-老後といった所属を軸とする時間世界がある。この連関及び時間世界が要因といえる社会問題の中で特に、暮らしの中で循環する自然環境との共生関係を原則持たないこと、労働と暮らしをより遠ざけたことを問題として捉える。本研究では、他者の連関の中に人がいることを前提に、地方都市の時間世界を分析し、それを活かしながら循環型に転換させる設計提案を行い、自然環境及び近隣と個人が共生関係をもつ暮らしを構想した。転換後の時間世界は、資本家に労働力を搾取される構造、及び経済合理的に農を営む構造を退け、持続可能な精神の安定を基にした循環する暮らしの成立を支える基礎となる。研究は調査と設計提案からなる。調査において、農家の暮らし及び長野市若里5丁目9番地、10番地(以下、対象地域)の暮らしにおける、事物連関の様子と時間の流れ方を分析した。農家の暮らしの調査から関係的時間(複数の事象の持つ時間と個人が関係し合う際の時間の流れ)の時間世界とそれを支える建築のあり方を読み取り、対象地域の調査から対象地域の時間世界を捉えた。上記の調査を踏まえ、特定の事物の連関とその時間世界を支える建築を試行した。ここでは、木製家具を軸とする連関における時間世界、職人が集まって住まう時間世界、土を軸とする時間世界の3つをそれぞれに支える建築のあり方を検討すると共に、土間の有効性を活かす形態を検討した。最終的に農作物、水、木製家具、植栽を軸とする時間世界を支える建築を構想した。設計提案において、対象地域の時間世界を支える集合住宅の建替を提案した。調査から得た対象地域の時間世界では、個別の連関が直線的に消費される事象が多く確認できた。提案した建築では、それらの各連関を繋ぎ合わせる機能を持たせることで、対象地域の時間世界を循環型に転換させることを目指した。(トウキョウ建築コレクション2023設計展 次点作品)









